世界遺産登録をめざす沖ノ島と関連遺跡群

登録の暫定リストへの掲載が決まっていましたが、先日(5/5)、ICOMOSからは沖ノ島のみの登録を勧告されたと報道されました。
そのため、日本側で登録をめざしていたひとたちは落胆している、とのことでした。

沖ノ島は「海の正倉院」として有名ですが、そこにあるのは、多紀理毗売たきりひめ命を祀る沖津宮です。
この女神は、天照大神と須佐男命の誓約うけいによって誕生した三姉妹の最初の神さまです。
(正確にいうと、天照大神が須佐男命の物実ものざねである剣を真名井の泉にひたして生まれた神。記紀では須佐男命の子ということになっています)

次女にあたる女神は、市寸島比売いちきしまひめ命といい、宗像市にある辺津宮(いわゆる宗像大社)にお祀りし、三女にあたる女神は多岐都比売たきつひめ命、宗像市沖にある中津宮に祀られています。

宗像三神(三女神)は厳島神社の祭神でもありますし、海の神、航海の神であるわけです。

だから、地元のひとや記紀に親しんでいる側から見ると、沖ノ島は単独で存在しているわけではなく、三女神が祀られている地域込みでとらえているんですね。
よって、世界遺産登録にあたっても、沖ノ島だけというわけにはいきません。

たしかに、沖ノ島は出土物がほぼ国宝という「宝の島」ですが、それはモノに限ってのことですし、島には多紀理毗売命が祀られているわけですから、信仰や精神的なものを抜きにしてかんがえることはできないとおもいます。
その点をICOMOSはよく検討したのかなあという懸念があります。
日本側が「関連遺産群込み」で申請したのなら、歴史的経緯や信仰を総体的にとらえてのことでしょう。
それでICOMOSに却下されてしまうのだったら、沖津宮だけを切り離すことになります。

今後、日本側がどう動くのか気になりますが、もしICOMOSが沖津宮のみに固執するのなら、世界遺産登録を見送るのもやむなしというのがわたしのかんがえです。

日本人は「世界遺産」という「外からの価値観」に過敏になりすぎですし(古代からの"習性"だから仕方がないことですが)、「地元振興」の旗に隠れた経済効果に色気を出しすぎている気がします。
それとも、数年の経済効果だけでもいいから、という意識があるのでしょうか(とすれば、三女神さまにご無礼なのでは…)


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